東京地方裁判所 昭和40年(ワ)9266号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕原告の主張によれば、本件訴訟は、原告が被告に対し金九、〇〇〇万円の損害賠償債権を有することを理由として、右債権についての債務名義の取得を目的とする請求である。
ところで、民事訴訟用印紙法第二条にいわゆる「財産権上の請求」とは、性質上経済的利益を内容とする権利または法律関係に関する訴をいうのであり、本件のような損害賠償債権についての債務名義の取得を目的とする請求が、これに該当することは明白である。原告は、「債務名義は公正証書の一種であつて、財産権とは別個の権利であるから、その取得を目的とする本訴は非財産権上の請求である」旨主張するけれども、原告が本件で求めている債務名義は、法律上、これに表示された請求権(経済的利益)について強制執行を得させることを目的とする性質のものであつて、原告のため経済的利益と関係のない純然たる精神上の慰安ないし満足を得させることを目的とするものでないことはいうまでもない。ひつきよう本訴は、原告の求める債務名義の内容たる損害賠償請求権(経済的利益)を目的とした「財産権上の請求」と解すべきことは当然であつて、これを非財産権上の請求であるとする原告の主張は、採用し難い。
しかして、本訴請求について、原告が有する直接の経済的利益は金九、〇〇〇万円であるから、原告は右価額に相応する印紙を本件訴状に貼用すべき筋合である。しかるに原告は、本訴をもつて非財産権上の請求であるとの見解を堅持し、訴状に印紙五〇〇円を貼用しただけで、訴訟物の価額九、〇〇〇万円に相応する印紙の貼用を拒否しているのであるから、本訴は不適法であつて、その欠缺を補正し得ないものと認める外ない。(土井王明)